第7章 夕涼みの誘い

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由美子の前に、ポタージュ皿を押しだす純也。 「一番先に、温かい汁物を飲んで胃腸を温めておくと胃もたれしにくいぞ」 促され口に運ぶと、トマトの優しい甘味が広がる。 トマトに含まれるリコピンの抗酸化作用で、肌をさびつかせる活性酸素が除去されるらしい。 「食べる順番は、基本的に野菜、肉、米にしろよ?食物繊維が余分な脂肪や糖質を吸着するから、腸で取り込まれにくくなって太りにくい身体づくりを助けてくれるからな……俺は良いんだよ!」 もっと太った方が貫録がでるから、と言い訳しながら、肉汁の滴る赤身肉に真っ先にかぶりつく純也。 上質な筋肉の元になる赤身肉。 アミノ酸やビタミンはもちろんのこと、脂肪燃焼を助けるL-カルニチンなども豊富に含まれている、女性の味方だ。 「肉うめぇ~!!サラダも旨そう……げっ、これは美容に良いからやるよ!」 純也のフォークが、緑のかけらを由美子の皿に運ぶ。 「”森のバター”っていわれるぐらい、栄養価が高い果物なんだぜ!良質な脂肪分はコレステロール値を上げにくい善玉脂質がほとんどで、豊富なビタミンEはアンチエイジングにも最高だからなっ!」 やたら、由美子に勧めてくる。 「……純也君、アボカド好きじゃないの?」 「…………嫌い」 少し頬をふくらませて答える純也。 どうやら、独特の青臭さが苦手らしい。 「俺は食えねえけど、美容に良いのは本当だぜ……っていうか、いろいろ説明したけど、食べ物はそれぞれ人間の身体に有益な栄養素を含んでるから、何でも美味しく食べるのが一番なんだけどなー」 好き嫌いのある俺が言えたことじゃないけど、と苦笑しながら話す純也。 少し困ったような表情は、普段の純也よりも大人っぽくて、ドキリとする。 「じ、純也君が、美容や人気のお店とか詳しいのは、ライターさんだから?」 それなら納得する。 女性雑誌のライターなら、仕事上詳しいのも道理だ。 「あれ?俺言ってなかったっけ?まあ、説明しずれぇけど……」 以前、美容師が半分正解と言っていた純也。 有名ヘアサロンにも在籍しているが、勤務は不定日。 個人でも活動していて、今はCMを作っているらしい。 「DJする警察官や、ダンサーな寿司屋がいるなら、CMプロデューサーの美容師がいてもおかしくないだろ?」 ポカン、とする由美子に嬉し気に話す純也。
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