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「だー!俺たち働きすぎじゃねぇ?」
「本当、クリスマスイブなのにねぇ」
「他の部署は皆、帰ってるし!俺らが最後かよー」
「悲しいけど仕事が恋人だからね、僕ら」
営業部の若手4人が賑やかに、エレベーターに向かう。
口々に文句を言いながらも、皆の表情は明るい。
明日のクリスマス販売会を任されて、気合もやる気も十分だ。
残業も苦にならないほど、彼らは熱心に取り組んでいた。
「あれ…」
「どうした、勇樹?」
「悪い、先行ってて」
「おう、いつもの居酒屋だからな!」前祝いだ、と叫ぶ同僚に背を向ける。
角を曲がった際、遠くにぼんやりとした明かりが目に入った。
消し忘れなら消しておこうと思い、足早に近づく。
以前消し忘れて帰った時に、経理のお局様に嫌味を言われたのを思い出したからだった。
(何だ?)
目に入ったのは小さな後ろ姿。周囲を段ボールに囲まれた彼女は、明かりを1つだけつけて、一生懸命、手を動かしていた。
こちらに気が付かないほど、集中している。
せかせかと必死な様子は、何だか餌を頬袋の限界まで詰める小動物を想像させ、思わず勇樹は吹き出した。
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