第1章

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がしていた。僕は、その頃、どこに行くのも、何をするのも、石津と一緒だった。  誰が見ても、僕は有頂天になっていた。  どこへ行っても、誰からもチヤホヤされたし、女にも急にもてるようになった。僕の行 くところに、女が着いてきたといえた。僕は、最初、そのことに戸惑ったが、束の間のこ とで、すぐに、そんな常態を享受しようとした。その邪魔を、石津がした。女なら絶対に 安全なのを俺が調達するから、あの手の女を相手にするなといって。石津のガードは、そ のきつい言葉以上の厳しいものだった。それでも、幾度かは、石津の眼をごまかして、遊 びはしたのだが、石津のいった通り、有名人好きの女ばかりで、何の魂胆もない女には出 会わなかったばかりか、関係を清算するのにも苦労した。そんなことも、石津の監視がき ついせいに思えて、ついには、「それほどいうなら、お前が女を用意しろ」といってしまっ た。  石津が、調達してきた女は、僕にまとわりついてきた女たちより、見た目にもずっとい い女が多く、僕は、石津の言に従ったことが間違いではなかったことを、悟らされた。し かも、石津は、毎回違うタイプの美人を連れてきたし、同じ女を二度連れてきたことはな かった。かなりの期間、僕は、石津の調達してくれる女とのセックスに興じた。仕事は、 その間、ずっとさぼっていた。仕事より女と遊ぶ方が、ずっと楽しいのだから。しかし、 そんな遊びにも飽きがくる。僕が飽きてきているのがわかったのか、石津はある提案を、 僕にした。それは、次作のためにもなるといって。  僕の次作は、監禁された女が出てくる話で、この作品も、そのヒントは妻の真理子から のものだ。監禁された女が、語りかけてくると、ある日、突然、真理子が語り始めたのだ。 その内容を僕はメモして、それを元に小説の下ノートを作って、石津に渡してあった。石 津は、催眠術か何かで、肉体の自由だけを奪って、監禁することにしたら、精神的な苦痛 が、うまく表現できて、おもしろいかもしれないといって、催眠術や心理学の資料を揃え てくれた。いつからともなく、石津は僕の資料係も、勤めてくれるようになっていた。そ の作品の執筆が、女遊びのためにとまっていたために、そんなことをいい出したのかもし れない。 「女に、催眠術をかけて、監禁してみないか」
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