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それからまた少しして、ぼくらは自分たちでア
パートを借り、
妹と二人暮らしをすることになった。
仕事は肉体的にきつかったし、怒鳴られること
も多かったが、
それが心に突き刺さるというようなこともなく
、
しだいになんとかこなせるようになっていった
。
そうして3年がたち、正社員で採用してもらう
ことが決まったある日、
ぼくは引越し屋の事務のおねえさんから、告白
された。
彼女は年上で、10も歳(とし)が離れていた
けれど、
ときどき彼女からの意味ありげな視線は感じて
いた。
一目ぼれというものだったらしい。
ぼくは、好意というものを深く感じてみたかっ
たので、
彼女と付き合うことにした。
その日彼女のマンションに呼び出され、二人で
食事をして、
少しお酒を飲んだ。そして、なりゆきでそのま
まベッドで寝た。
彼女の体の中は十分に湿っていて、熱くて、確
かに気持ちがよかった。
魔災のあった日からこれまで、死のカビのよう
なものが全身まとわりついていて、
生きているという実感を地肌で感じることから
遠ざかっていた気がする、
でも、これからは違っていくのかもしれない…
そう思えた。
ぼくは狂ったように、何度も何度も彼女を抱い
た。
不思議なことに、彼女と付き合うようになって
から
ときどき、魔災の夢を見てうなされるようにな
った。
生きたいという熱のような欲が出てきた反動な
のかもしれない。
そんなとき彼女は、あなたには私が必要なのよ
といって、
ぼくを優しく包んでくれた。
彼女がぼくのアパートに泊まりにくる日は、と
にかく妹を早く寝かせた。
そして、魔災のフラッシュバックから逃れるよ
うに、
彼女とまぐわり、安心を求め続けた。
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