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その日、森田部長と美月さんが買ってきてくれた果肉たっぷりのフルーツゼリーは、チーズフォンデュの後にはさっぱりして、冷たくて美味しかった。
白ブドウや巨峰、オレンジやリンゴのフルーツゼリーの種類の中から私がグレープフルーツ味を選ぶと、美咲が言った。
「…酸っぱい系?…ゆい、もしや…オメデタ?」
「な、…ち、違うよ!そうじゃないよ。もともと好きなの!美咲知ってるくせに。」
「あはー。そうだっけ?…ゆいたちはまだ考えないの?赤ちゃん。」
「…うん、もう少し…先かな?」
私は曖昧に答えていた。
戸田社長からあの嬉しい言葉をもらってから、部長とちゃんと話し合った。
赤ちゃんはもちろん授かりたいけれど、…子づくり…はもう少しだけ先にしようと決めた。
夫婦としての二人だけの時間も楽しんで…少しの間はさらに愛を深めるんだって…部長が…。
それは口実かもしれないけれど…、私自身、社長はああ言ってくれたけれど、自分たちの家族計画のために、自分たちが会社で出来ることもあるんじゃないかって思っていた。
今の仕事をもっと効率良く、少しずつ整理もしていきたいと思っていた。
もしも、誰かに引き継ぐにしても…少しでも迷惑はかけたくないから。
私が少し考え込んでいると、美咲が早とちりをして言った。
「あ、そうか~。部長はまだ新婚ラブラブを楽しみたいのね~。もう、まったくの困ったくんだね~。ゆい、頑張って~。」
…どこか、いやらしい。
「もう、何言ってんの、美咲ってば!」
楽しい話し声と大きな笑い声が響いて…私たちの楽しい夜は更けていく。
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