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梅雨が明けて、眩しすぎる白い日差しが照りつける夏。
美月さんの出産予定日が刻々と近づいて、私は頻繁に美月さんと連絡を取り合っていた。
そして、とうとうその日はやってきた。
夏の大連休を過ぎて、予定日まであと4日という日。
私はいつも通りに会社で通常の業務に就いていた。
経理部の電話が鳴って、琴ちゃんがそれを受けた後、電話を切り替えながら私に振り向く。
「ゆい先輩。…ご主人様ですよ。」
「…こら、琴ちゃん。」
「あはは。すみません。西島部長からです。」
「…ありがとう。」
そう言って自分の席の受話器を取った。
部長は今日は社長と一緒に出張。
…外出先から何だろう?
「…俺だ。今、姉貴から連絡があって、どうやらもう病院に行った方がいいらしい。今日は森田も出張だし、ゆい、行けるか?」
「あ、わ、嘘。…い、行きます。美月さんは?今は?」
「病院へはタクシーで行くらしいからそのまま病院へ行ってくれ。悪い、俺も帰り次第行くようにする。」
「はい、大丈夫です。」
話の途中から心臓がひとりでに高鳴っていた。
私は池口さんと琴ちゃんに事情を説明して、早退の届け出を総務課長に提出して、慌てて会社を後にした。
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