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陣痛室に部長と私が二人で残される。
二人きりになっても、上手く会話を繋げなかった。
『どうか無事に生まれますように。』
それだけを心の中で祈り続けていた。
美月さんが分娩室に入ってから、美月さんの苦しそうな声がこの部屋まで届くと、
『赤ちゃんの誕生』というただただ微笑ましい出来事の裏舞台に触れたようで、同時に、母親の強さの原点を見たような気がした。
どれくらいの時間がたったのだろう。
背後から近づく堅い革靴の急いだ音と、
分娩室の美月さんの叫びが重なった。
そして、
小さな天使が
声をあげた。
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