足音

13/26
前へ
/26ページ
次へ
「…え。」 「結婚してから会社の仕事も上手く回してきた。同じ部署だからって、会社では上司と部下でちゃんといられている。社長も…まわりもそれを認めてくれていると思う。 ゆいだって、いつか来るその時のために、自分の仕事を市川にも出来るように少しずつ準備をしてるし、…そろそろ、会社だけでなく、俺たちのことを考えよう。 …姉貴たち…心音を見てると思うんだ…俺も自分の子供が欲しいって。」 「…秀一さん…。…いいんですか?」 ゆいは箸を止めて聞き入っていた。 「ああ。ゆいが心も体も準備が出来てればな。」 「…私も欲しい…。秀一さんと私の赤ちゃんが…。」 ゆいのその柔らかい笑顔は、一瞬だけ姉貴の笑顔と重なった。 母親になることを望む、女神のような笑顔だった。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1488人が本棚に入れています
本棚に追加