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ゆいがこの旅館を選んでくれたのは、去年の社員旅行の後に俺が部屋に露天風呂の付いた旅館に泊まりたいと言ったのを覚えててくれたからだ。
支度をして、風呂に向かった。服を脱ぐ前に覗いた風呂は、この旅館にふさわしい見事な造りだった。
全部が木の造りの内風呂。その扉の向こうに外風呂の露天風呂があった。
ゆいと内風呂で十分に温まった後、外に出た。
外の景色はすばらしかった。
自然の木や岩、竹を使ったきれいな庭に所々雪が残っていてた。
外の冷たい空気の中では俺たちの息は真っ白だったが、俺たちの顔を隠すほどの湯けむりがそれを包んで消してしまった。
ゆいを自分の体の中に入れ、湯の中で体を寄せる。
髪の毛をまとめ上げているゆいの首筋にキスを何度も落とした。
ゆいが首をひねり、肩を揺らし俺の口づけに反応しだすと、俺の指先が泳ぎだす。
「…秀一…さん…。」
ゆいの甘い声がこの静寂の中に小さく響くと、ゆいは口をつぐんだ。
その堅く結んだ唇をゆっくりこじ開けて愛し合う。
…ゆい。
どんなに愛しても
…愛し足りない。
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