足音

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そして、旅行の前にもう一つしておきたいことがあるとゆいが言っていた。 …墓参りだった。 「墓参り?俺の家のか?」 「…いつも言ってますけど、"俺の家"じゃないです。私はもう結婚してるんですからね。私の家でもあるんです。」 ふくれっ面してそんなことを言うゆいがたまらなく可愛かった。 結婚してからもゆいの実家には二人で何度となく足を運んだ。 ゆいはそれと同じだけ、俺の家の墓参りをしてくれた。 ゆいの気持ちが嬉しかった。 今日も年末の挨拶にと、いつもの道具と花を持って、寒空なんか気にしないで、ゆいは墓の掃除を冷たい水に手を真っ赤にしながらしてくれた。 最後に花と線香を供えて、手を合わせる。 ゆいには言わなかったが、俺はゆいの気持ちが嬉しいのと同時に、ここに来るといつも少しの寂しさも感じていた。 ゆいを見ながら思うんだ。 親父やお袋にもゆいを会わせてやりたかったと。 だから俺は毎回手を合わせてこう念じている。 『…いい嫁さんだろ?』 心でそう言って目を開けると、いつだってゆいの笑顔が待っている。 ほんの少しの寂しさが滲んだことなんて、ゆいにはすぐにわかってしまうのか。 ゆいは墓参りの帰りはいつも俺の手を自分から握りしめ、石の階段を上がってくれるんだ。
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