足音

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そして、今年するべきことを全て終えて、迎えた大晦日(オオミソカ)。 俺たちは新婚旅行に向かった。 結婚して半年以上が経ち、新婚旅行という気分じゃない…? …まさか。 結婚してから愛を深め合ってきた俺たちに、さらに愛を深めるチャンスの旅行。 気分が薄れるどころか、高まりすぎてどうしようもない。 俺は出発前から何度もゆいに念押ししていた。 「新婚旅行ってのは、愛を確かめる・実感する・さらに深めるだからな。…覚悟はいいな?」 ゆいは真っ赤な顔して俯(ウツム)きながら言う。 「…もう…何度も聞きました…。わかってますし、覚悟もできてます。」 ゆいの答えに満足げに笑う俺を見ながら、 「もう、秀一さん、子供みたい!」 ゆいはそう言って窓の外に目を向けた。 「…どうせ、子供だ。旅館まで我慢できるか心配だ。」 左手でハンドルを握り、もう一方の手でゆいの左手を握る。 ゆいの手を何度も握りながら、時折触れる結婚指輪が 新婚旅行の気分をさらに盛り上げていた。
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