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藤森が経理に異動したことで、人手が増えた経理部。
藤森は苦戦しているようだが、俺から見ればかなり順調に引継ぎは進んでいるように見えた。
藤森の出来ないという思い込みより、やる気が上回っていたからだろう。
梅雨が明けて、じりじりと強い陽射しが照りつける夏。
ゆいはこの暑さに参っていた。妊婦だからなのか、毎年なっていなかった夏バテ気味になり、腹は膨らんでいるのに顔はどこか痩せたように思えた。
今は残業はほとんどさせていないが心配だった。
そこで、週末、俺が思い切った。
「ゆい。今日は俺が料理をするから、一日ゆっくりしてろ。」
「え!?…秀一さんが!?…私、大丈夫ですよ?」
「いいんだ。もう決めた。買い物も俺がしてくるから、欲しいものをメモしておけ。」
「…だから…大丈…夫。」
「もう、決めたんだ。俺がやる。」
俺の言葉に押し切られたゆいが最後は笑って買い物リストを作り始めた。
それからゆいのリストを受け取って、不安そうに見送るゆいを尻目に俺は買い物に出かけた。
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