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「……悲劇のヒロインを迎えに行ってもいいか?」
彼は肩膝ついてあたしの手を取った。
まるで童話の王子様とお姫様のようだ。
周りの人の視線が気になるけどぶっちゃけどうでもいい。
今のこの状況に酔いしれたい。
「え?」
彼の行動と発言にあたしは驚きを隠せない。
「……海ちゃん……」
彼があたしの名前を呼ぶ。
「どうしてあたしの名前を?」
何であたしの名前がわかったんだろう?
海が好きっていったからかな?
「やっぱり、青井 海ちゃんだったんだね」
今度はフルネームであたしの名前を呼んだ。
「えっと……」
流石にあたし困惑し頬をポリポリとかいた。
「覚えてないかな?
小学六年まで一緒だった川野 流(かわの ながれ)だよ」
あたしに顔を近づけ彼は自分の顔を見せつける。
うわぁ!
イケメンがどアップだ!
いやいやいや。
そういう話じゃなくって……。
「あ……。
あの泣き虫流ちゃん?」
あたしは記憶の糸をたどる。
思い出した。
川野 流。
何となく昔の面影がある!
小学六年間ずっと同じクラスだった川野 流は泣き虫だった。
名前や女の子みたいに可愛らしい容姿をバカにされピーピー泣いていた。
そんな流ちゃんが気になりあたしはいつも傍にいた。
流ちゃんをバカにする奴はあたしが追っ払っていたような気がする。
あたしも名前の事でバカにされてたから余計に守りたかったのかもしれない。
今思うと流ちゃんの男の子としてのプライドズタズタにしてたよね……。
……何してたのよ、昔のあたし。
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