氷河の星で

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 宇宙空間を一隻の宇宙船が操行していた。 「先輩。そろそろ、例の星に到着します」 「分かった」  宇宙船には二人のパイロットが乗っていた。リチャードとその部下、ソルである。二人は地球の救援部隊に所属する者。宇宙時代が訪れてから、何十年と経ったが遭難者が後を絶たないのは、いつの時代も同じである。  本来ならば、彼らの仕事は救出にある。しかし、今回の任務は少し違っていた。 「しかし、あんな星に本当に救助を待っている人がいるのでしょうか?」  ソルは望遠鏡で眼下に見える星を見ながら聞く。 「分からない。ただ、本部からの命令でそこへ向かえと言われたんだ。人がいることを願うよ」  二人が地球の本部から要請を受けたのは一ヶ月前のことだ。地球より何光年も離れた惑星に助けを求めている人がいるかも知れないということだ。曖昧な出動要請であった。救難信号は常に出続けて、現在位置を知らせてくるはず。なのに、この枠死絵に辿り着くまでの間、一度も信号は受信しなかった。装置が壊れている可能性もあった。その為、曖昧な情報であったとしても、救難信号が確認されたらハズレだとしても向かうしかない。  それと、もう一つ、二人が不思議に思っていることがある。救難信号が確認された惑星は、氷河の星なのだ。一年を通して、星全体が凍りついてる。地球でもこの惑星への渡航は禁止しているほどだ。そのような危険な星に好きこのんで行く人などいるのだろうか。  曖昧な救難信号に、氷河の星。何もかも不可解なままだ。二人は疑問を抱えたまま、宇宙船を惑星へと着陸させるのだった。  氷河の星と言われることはあり、星は極寒だ。何の装備も持たないで表に出れば、間違いなく即死するだろう。二人は本部から支給されている体温を保つ薬や防寒具を着てから二重になっているハッチを開け、表へと出た。 「寒い」  表に出た直後、リチャードは呟いた。防寒具や薬のおかげで、死ぬ程、寒くはないが、やはりどうしても寒さは感じてしまう。それほどまでに、この惑星は寒いのだ。
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