氷河の星で

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 二人は救難物資をソリに載せると、本部から指示された場所を目指して進み始める。こんなところでは、機械など凍りつきほとんど役に立たない。原始的ではあるが、ソリを引っ張っていくしかなかった。  当たり前のことであるが、救助を求めていると思われている場所は宇宙船からそれほど離れてはいない。数百メートルの範囲である。とはいえ、普通の地面とは違う。氷のような雪に足をとられ、少し進むだけでも体力を消耗してしまう。時々、吹きすさむ凍りつくような突風も二人から体温を奪おうとした。結果、二人が目的地が見える所に辿り着くまで一時間は掛かった。  氷の山を登り、目的地が所まで来て、二人は目を疑った。 「何だ?これは」 「先輩。これは・・・」  二人は何かの冗談かと思った。彼らの目の前に現れたのは、本来、この惑星ではあってはならない光景であったから。  信じられるだろうか。氷河の星に花が咲いているのだ。花だけではない。木や野菜。それらが、地球に生えているままの姿で存在していた。  二人は顔を見合わせ温度計を確認した。外気温は間違いなく氷点下百度を示している。 「何かの冗談でしょうか?」 「分からない。そうで、なければ、寒さで私達の頭がおかしくなったのかもしれない」  二人はソリを引き、場違いな光景が広がる場所へと向かった。  近づいてみても、光景は消えることはなかった。試しに持ってきた特別仕様の棒で木の幹を点いてみと、木はワサワサと揺れた。少し強く点いてみても壊れる気配すらない。  明らかに人の手が加えられている。そうでなければ、偶発的に地球にあるような光景が目の前に広がっているはずがない。  二人は目の前の光景が偽りではないことを確認し合いながら先へと進んだ。信号を信じるのならば、この近辺にいるはずなのだが。 「誰だ!」  リチャードはとっさに光線銃を抜いた。木の陰から風の音とは違う音が聞こえてきたから。 「待て!撃つな!撃たないでくれ!」  木の陰から姿を現したのは、動物の皮を剥いで造ったような衣類を着ている男であった。彼は両手を上げ、無抵抗の意思表示をしながら、 「私は地球人だ!」と言う。
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