氷河の星で

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「地球人?ウソをつくな。こんな極寒の惑星に地球人など、しかも、そのような格好で生きていられるはずがない!」 「ウソではない。私は、地球人だ!これを、見てくれ!」  男は毛皮につくったポケットから古い身分証明書を取りだした。 「マイルズ博士?」  証明書には『Dr.マイルズ』という名が写真付きで書かれていた。偽造ではなさそうだが、リチャードは警戒を解こうとはしなかった。 「マイルズという名は聞いたことがある。しかし、マイルズは数十年前に行方不明になったままだ。お前が本当に、マイルズ博士だというのならば、何故、昔と変わらない姿をしている!」  マイルズが仮に生きていたとしても相当な高齢になっているはずだ。なのに、目の前にいる男は写真と寸分違わぬ姿をしていた。 「分かっている。お前達が疑問を持っていることは。だが、私は本物のマイルズ博士なんだ。説明するから銃器を降ろしてくれないか」  マイルズは両手を上げたまま、リチャードに頼んだ。 「敵意は無さそうだが、油断はできない。お前が、マイルズ博士本人であるか、それともこの星に済む怪物で私達を騙そうとしているのか。それを、判断してから銃器を降ろそう」  リチャードはそう言うと、銃口は向けたままだが引き金から指だけを離した。  二人はマイルズに案内され、彼が住んでいるという家へと連れていかれた。  マイルズが住処としている家まではここから、更に百メートル進むことになる。吹雪に阻まれ先を見通すことはできずにいたので気付けなかった。もっとも、マイルズが『家』と称する建物は、家と呼べるほどではない。墜落した宇宙船を改造して造られた家であった。おそらく、彼が乗船していた宇宙船なのだろう。  家の中に入ると二人は、一つ確信した。マイルズは地球人であると。木彫りの像や椅子。棚に並べられた地球の文字の書物。古い書物であるが、地球のモノに違いない。怪物が地球人を騙す為だけに、これだけのことをするとは思えない。
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