氷河の星で

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「どうやら、本当に地球人のようだな」 「やっと信じてくれたか。待っていてくれ。今、水を出すから」  マイルズはそう言って、備え付けの蛇口を捻り水を出した。氷河の惑星で水が出るとは何とも不思議な光景だ。  室内は外程、寒くはない。それでも、備え付けの温度計は零下十度を示していた。防寒具を脱げるほどではない。  水を出されたが、二人は安易にそれを飲もうとはしなかった。相手が地球人だと分かっても、歳をとらない謎が解けていないからだ。もし、この飲み物が何らかの罠だとしたら大変だ。 「まだ疑っているのか?」 「当たり前だ。目の前にいる地球人が必ずしも、マイルズとは限らない。仮に本人だとしても、歳をとらずに極寒の惑星で生き延びてきたのか分からないままだ」 「確かに、それもそうだな・・・。いいだろう。私がこの星で歳をとらない理由。それを教えようではないか」  マイルズは窓越しに外を見る。一時的に止んでいた吹雪が再び吹き始めていた。 「私は、以前から不老不死について研究していた。人類史上、誰も成し得なかった偉業を達成したかったから。だが、研究は進まなかった。昔から何百人、いや、何千、何万という研究者がサジを投げ続けた研究だ。私もその失敗した者達の中に加わってしまうのではないかと思った。そんな時だ。私が考えを変えたのは。『地球上にいるから不老不死』にはなれないのではと。私達、地球人は不老不死になれないのは、地球にそれを阻害する何らかの物質があるのではないか。そこで、私はそれを立証する為に宇宙に飛び出すことにした。地球の外ならば人類の不老不死を阻害ものはなく。不老不死に近付けるはずだと。私は宇宙を飛び回った。高度な文明が存在する星から何もない星まで、ありとあらゆる手を尽くしてきた。しかし、結果はどれもハズレ。どこにも、不老不死になれる薬や秘法はなかった。私は失意の中、地球へと帰還しようとした。そんな時だ。この極寒の星に不時着してしまったのは。原因は不明。宇宙船が突然、制御が効かなくなり、墜落した。私は恐れた。この星の極寒に。宇宙船も壊れ身体を温めるモノが何一つなかった。このまま、小声死んでしまうのではないかと。そんな地獄のような星で私は、希望を見出した」
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