氷河の星で

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「勲章モノかもしれないな」  リチャードはイタズラっぽく言う。本当はマイルズが発見した水であるが、彼はもう人間ではない。死亡したことにされている人だ。気遣う必要などない。 「ところで、先輩」 「どうした」 「せっかくですし、その水。少し飲んでみませんか?道中長いですし。何かあった時、地球に辿り着けなかったら大変でしょう」 「そうだな・・・。誰よりも先に不老不死になるのも悪くない」  リチャードはカプセルの中に入れておいた水を少しだけコップに注いだ。全て飲んでしまっては意味がない。二人は少ない水を分け合いながら飲んだ。  味は悪くない。匂いもない。普通の水と大差なかった。凍らない水を飲むのは初めての経験であったが、これだけで不老不死になれるのならば、良いではないか。 「しかし、不思議ですよね。どうして、マイルズを助けに向かった救助隊の人は行方不明になったのでしょうか」 「分からない。きっと、私達のように欲に目が眩んでくだらない殺し合いでもしたのだろう。馬鹿な連中だ。宇宙空間では連携が大事だというのに」  救助隊が行方不明になることは珍しい話ではない。機械の故障だったり、船内のいざこざにより殺し合いだったりと、行方不明になる原因は多岐にわたる。  少なくとも自分達はそんなマヌケなことはしない。しっかりと、水を持ち帰り地球の文明に貢献するのだ。 「・・・しかし、機内の温度、少し高くないですか?」  水を飲んでから、少ししてソルがそんなことを言い出した。 「言われて見れば、少し暑いな」  空調設備でも壊れたのだろうか。リチャードが設定温度を確認してみた。温度は正常の二十四、五度を保っている。 「おかしいな。設定温度は正常なのに、どうして暑く感じるのだ」 「二十五度って、こんなに暑かったですか?」  機内の温度は二十五度であるのにもの関わらず二人の汗は止まらなかった。汗をかいては、それはすぐに蒸発してしまう。
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