私と君と

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 ちょっと待ってて、と言い残され。置き去りにされてしまいました、それってどうなんでしょう?  無意識に深く溜め息が出てしまい、私はそんなに気を遣っていたのかなぁ。とか思ってしまいます。  なんなんでしょうね、初めて彼の部屋に入るとそんなにも気疲れするんでしょうか……。 「お待たせ、オレンジペコです」 「……え?」  柔らかくて優しい香りを漂わせながら、彼がカップを両手に戻って来たのですが。その台詞に私は耳を疑ってしまいました。 「あの……オレンジペコは茶葉の等級であって、別に種の名前じゃないですよね?」 「え?マジでっ!?」  あ、また行っちゃいました……と言うか、素で驚いてましたよね。あれ。  あ、戻ってきました。手には茶葉のパッケージを持って。 「……ごめん、見栄張った。これ、なんて読むん?」 「……アールグレイですね」  私から言わせて貰うなら紅茶の代表格とまで言いたいメジャーなものなんですけど……。 「へー……うん、やっぱ背伸びすんのは良くないわな」 「ところで紅茶は?」 「……あ、やべぇ!忘れてきた!?」  すみません、思わず吹き出してしまいました。だって彼、学校ではすごく大人っぽくて、ちょっとだけ気取ってて、そういう人なんです。  ……ふっと、目に入った本棚に。私はついつい笑みを堪え切れず、そちらへ近付いてしまいました。 「ごめん、お待たせっ!」 「ふむふむ、デートなび?」 「ちょ!?何見てんの!?」 「へぇー……ゴールデンウィークは敢えてのお家デート特集……、家具はモノトーンで大人っぽく?参考になりますねー」 「止めてっ!読まないでっ!」  ちょっとした仕返しなので。私は本を閉じて棚に戻し、彼を振り返りました。あらあら、顔が真っ赤です。私もさっきはあんな風だったんでしょうか。 「嬉しいですよ、色々考えてくれてたんですね」 「へ?わ、笑わねぇの?」 「私の為に調べてくれたんですもん、嬉しいです。にやにやしちゃいます」 「それはそれで恥ずかしんだけど……」  私もさっき恥ずかしかったので、勝手におあいこにさせて頂きましょう。
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