狂った主人と壊れたソムリエ。

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どうにかして、期待に答えなければいけません。しかし、主人を満足させるようなワインがあるのか。ソムリエは悩みますが、時間は待ってはくれません。 そんなある日のことでした。ソムリエはとある友人から、この世のどんなワインをも凌ぐ、極上のワインがあると聞かされたのです。ソムリエはその噂に飛びつきました。やっと主人が満足でき ワインを提供できると、友人から話を聞き、主人にこう言いました。 「ご主人。私は友人から、この世のどんなワインも凌ぐ極上のワインがあると聞きました」 主人は喜び勇んでワインを買い求めてくるように命じます。ソムリエも勇み足でワインを求めて出かけ、そして、店の店主は一言。 「ワインが欲しければ、女の生き血を持ってこい。それが代金だ」 それは、ソムリエに人を襲い、血を抜き取れと言っているようなものですが、殺人など犯せるわけがありませんが、主人には極上のワインを買ってくると宣言してしまい、戻るに戻れません。帰りが遅くなれば主人は怒り、代金を持ち逃げした泥棒と罵られるかもしれませんでした。ソムリエは一度、同僚が同じようなことでひどい罰則を受けたことを知っていたのです。どころか、命令を実行できないという重圧がソムリエの心を蝕みます。 やらなければ、殺さなければ、女の生き血を手に入れなければ、仕事をしなければ、ソムリエの心に悪魔が囁きます。バレなければ問題ない。一人殺したってそれは仕方がないことなんだ。主人のためなんだとソムリエは自分に言い聞かせました。 ソムリエは、女の背後に立ち、重たい鈍器をドンッ!! と、頭に振り下ろしました。女は悲鳴を上げることなくその場に倒れ込み、動かなくなりました。ソムリエはドクドクと頭から流れ落ちる血液を瓶に詰めようとしましたが、髪の毛が邪魔をして上手く入りません。 このままてこずれば、誰かに見られてしまう。焦ったソムリエは持っていたナイフで女の腕の血管をバッサリと切り裂いてしまい、そこから溢れ出す鮮血を瓶に詰め、女の死体は川に流してしまいました。
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