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朝、起きたらすぐに洗面所に行き、顔を洗って歯を磨く。
寝室に戻り、クローゼットからワイシャツを取り黒いスラックスを穿く。独身時代から使っているネクタイを自分で締め、黒いビジネスバッグを持って玄関に向かう。
その間、ナツメに声をかけることはない。
ナツメはそれに対して文句を言わない。
一吹が玄関に向かうときはナツメもいっしょに玄関まで行き、「行ってらっしゃい」と言う。一吹はナツメの唇に軽くキスをして、出て行く。
それだけ。
――この小さなキスまでなくなったら、もう、終わりなんだろうな。
玄関のドアが閉まると、ナツメはすぐに鍵をかけた。
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