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リビングに戻り、白いスマートフォンを手に取る。
メールフォルダにも、ラインにも、ネットにも、もう、自分と謙介が関わった証拠はひとつも残っていない。
一吹からは言われたことがないような甘い言葉も、慰めも、一瞬で消えてしまった。
……これで良かったんだ。
ナツメは小さくため息を吐いた。
ふいに、謙介の顔が脳裏に浮かんだ。
奥二重の瞼にぱっちりした目、大きな鼻に厚い唇。がっしりした体格の、ナツメよりも10歳年上の男。
自分と同い年の一吹とは、ありとあらゆる意味で異なるタイプの男だった。
一吹の骨張った細長い指と、謙介の太く温かい指。
謙介の指で髪を撫でられて、頬に手を添えられて、そのまま乳房に触れられて。
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