1、ラストプレゼント

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 一吹はもう、あんなふうに愛撫してはくれない。いや、一度だってしてくれたかは分からない。  首筋に、鎖骨に、脇に、身体のどの部位も慈しむように惜しみないキスをくれた。  ……もう、終わりにするって決めたのに。  二度と会わない相手を想像して、こんなことを考えるのはおかしいのだろうか。  ナツメは耳をすませた。  アパートの住人達は皆、ナツメと一吹と世代が近い。アラサー夫婦ばかりだ。  ときどき階下から足音や掃除機をかける音が聞こえることがある。何を言っているのかはわからないが、誰かの話声が聞こえてくることさえある。  だから、ナツメはひとりで行動する前に、耳をすませるのだ。  万が一、耐えられなくなって声が漏れたら。
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