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それは雨上がり
光が雨雲を切って降り注ぐ
カラリとした風が吹き、花弁が舞った
ポタリと落ちてきたのは、雨宿りに使った木から垂れた一つの雫
それは弟の鼻に落ちて跳ねた
閉じていた瞼は薄く開いて、その瞳には俺の顔を映したことだろう
むくりと起き上がっては、寝惚けた顔で微笑んで
「…おはよ。そろそろご飯だね…。行こう?お兄ちゃん」
そう言い、差しのべてきた手を取って立ち上がる
抱き上げると、優しく温かいのが触れ合うところから伝わってくる
6歳になる弟は、歩く振動にもう一度目を瞑る
「ご飯は…向こうでだ」
セントラルフォレストの緑を胸いっぱいに吸い込み、俺達はいつ帰るか分からないホームを後にした
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