第壱花―桜と共に―

2/4
63人が本棚に入れています
本棚に追加
/116ページ
 ――少し前の話をしよう。僕の人生最大の転機、そう言っても過言ではないような気がする。そんな突飛な話を……。  桜の咲く季節。出逢いと別れの季節の春。僕は妹の頼みで、夜のコンビニに歩を進めていた。春は好きだ。暑過ぎず、寒過ぎず、過ごしやすい環境のこの季節。別段、他の季節が嫌い、と言う訳でもないんだけれど。  他にも理由はある。僕の誕生日があったり、桜が咲いたり、新しい出逢いがあったり……まぁ、出逢いには当然の如く別れがオマケで付いてくるんだけど……。人間、別れと共に成長していく、っていう考えもあるけど、そう前向きにはなれない人もいる…そう、僕みたいな。  ……あれ、僕、何しに外に出たんだっけ。……あぁ、そうだ、コンビニにプリン買ってこいって言われたんだ。まったく、食べられて怒るぐらいなら、名前でも書いておけば…書いてあった気がする。家からコンビニまで、そう遠くないから良いけどさ。  もうすぐで着くな。この河川敷を真っ直ぐ進めば、お目当てのコンビニに着く。この河川敷の脇には、桜の木が植えられていて、春、この季節になると、一斉にその可憐な花を咲かせ、人々を魅了し、街を活気付けてくれる。この様子だと、今日か明日あたりが見ごろだろうか。  ……おっと、見とれるのも良いけど、早く買って帰らないと。また妹に文句を言われるのは面倒だ。桜から目を離し、僕はまた歩を進める。
/116ページ

最初のコメントを投稿しよう!