第1話「【鉄のハインリヒ】と【赤ずきん】」

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【白雪】は、せっせと【茶鼠】のサラダを消費している。 「ほら【白雪】、ホッペにドレッシングが付いてますよ」 そう言って、【蒼】が【白雪】の頬を舐めた。 「んっ」 それを意に介さず、【白雪】は「トマト嫌い」とボヤいて食事中だ。 そして、【蒼】と同じようにチョコラテを飲み干す。 悪党は何故か、甘い物が大好きなのだ。 だからマンガ喫茶【茶鼠】では、甘味処が和洋を問わず注文出来る。 凝り性の【茶鼠】が、腕によりをかけて作るものだから、旨い事この上ない。 「マスター、チョコラテのおかわり、ダブルでお願いします」 【白雪】がツーフィンガーを立てる。 「あいな!」 寿司屋のように景気の良い掛け声だ。とてもマンガ喫茶とは思えない。 「そういえばマスター、【赤ずきん】を助けた男が邪魔をしました」 チョコラテを持って来た【茶鼠】に、【白雪】が昨晩のことを話した。 「そりゃ【鉄錆(てつさび)】だな」 犯罪ギルドでは、悪党を呼称で呼ぶのが習わしなのだ。 特にランクの高い悪党は、色彩に由来した【悪党名(ピカレスクネーム)】で、畏怖を込められて呼ばれる。
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