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「鉄のハインリヒとも呼ばれている。よくでぇじょうぶだったな」
でぇじょうぶは大丈夫だ。
「【鉄錆】を追い掛けている流れの狩人が、ちょうどおいでになったぜ」
そう言って、【茶鼠】が店の入り口を見た。
そこに昨晩の黒衣の若者が佇立していた。
その若者は硬質の気を纏った、鋼(はがね)のような男だった。
逞しい眉が、固く閉ざされた口が、引き締まった輪郭が、肩まである髪が、
そして、しなやかで頑強な身体が、硬い鋼のイメージを想起させた。
「流れの狩人、【鐡(くろがね)】だ」
若者の名を【茶鼠】が紹介した。
殺し屋専門の殺し屋を【殺し屋狩人】と呼ぶのだ。
「鐡(くろがね)ひさな」
若者が言葉少なに名乗った。声も鋼のように硬い。
「昨日のご尽力に感謝します」
【白雪】が若者に頭を下げた。
「なんだ、とうに知り合っていたのかい!?」
「ええ、ひさなに助けてもらいました」
【白雪】は、もう呼び捨てにしている。
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