第1話「【鉄のハインリヒ】と【赤ずきん】」

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「やはり、只者ではありませんね」 チョコラテを飲みながら、【蒼】は静かにつぶやいた。 「その【赤ずきん】と【鉄錆】なんだけどよ──」 【茶鼠】が言葉を挟んだ。 「【白雪】ちゃんと【鐡】に、最高評議会から遣いが来てるぜ」 現代は情報化社会である。 ネットとSNSの普及で、個人情報が瞬く間に情報が世界を駆け巡る。 それは同時に、情報漏洩化社会でもある。 すべからく、発信された情報は漏れ無く検閲され、監視の対象となる。 古くは『エシュロン(Echelon)』から『プリズム(PRISM)』まで、メールからSNSと情報と名の付く物は監視されているのだ。 犯罪ギルドの者が直接出向き、人間同士の遣り取りで情報交換するのは、このような背景があるからだ。 マンガ喫茶【茶鼠】のビルの最上階に、特別迎賓室が設けられている。 【白雪】と【鐡】、それに【蒼】は特別迎賓室に入室した。 紫の絨毯、紫の壁、紫のシャンデリア、何もかも紫で統一された部屋。 その上座に玉座のような椅子が、ひとつだけ絶対物のように据えられている。 その玉座に君主の如く座る者が、おそらく最高評議会の遣いだ。
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