プロローグ(序幕)

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漆黒の闇の中― 唯一明かりが灯る場所で、大きな鏡に映るのは、椅子に座る少女。 その華奢な腕が、脚が、頑丈なロープで椅子に縛られている。 ロープで縛られている両腕の動脈が、すっぱりと斬られて血が流れている。 ご丁寧に抗凝固薬の水溶液を垂らされ、血が固まらないようになっている。 白いドレスが、その鮮血で滲んで、朱が拡がる。 鏡に映るのは、苦悶に歪む美しい顔。 その嗜好のある者には、さぞや垂涎モノだろう。 しかし、それを見物するのは鏡の中の人物だけ。 〈貴女の名前は?〉 ふいに、闇の中から声が湧いた。 「あたしの名前は真白 雪菜(ましろ ゆきな)、【白雪姫】だ!」 〈おお、白雪姫! 貴女の望みは何ですか?〉 「あたしの望みは、こんな仕打ちをした狩人への復讐だ!」 〈それでは、貴女の魂と引き換えに、その望みを叶えましょう〉 明かりが消え、漆黒の闇が世界を覆った。
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