第1話「【鉄のハインリヒ】と【赤ずきん】」

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第1話「【鉄のハインリヒ】と【赤ずきん】」

漆黒の闇の中── ふいに明かりが灯り、人影が浮かび上がる。 明かりが消えて、また闇が覆う。 再び明かりが灯り、走る人影が浮かび上がる。 眩しい明かりの中に、走る人影と違う白い少女が現れた。 それは、雪のように白いドレスを着た、闇のように黒い髪と瞳を持った少女。 大きな白いリボン、それに白いドレスと同じく、肌が雪のように白い。 そして、可憐で気高く美しい相貌。 その華奢な右手には、可憐な容姿に不釣り合いな白銀の肉斬り包丁。 高速道路の上の跨道橋(こどうきょう)。 車が疾走する度に、ライトの光輪に照らされて、ふたつの人影が浮かぶ。 「大人しく観念なさい、【赤ずきん】!」 叫んだ少女【白雪】に、赤いフードを被った人影がたじろいだ。 白い影が疾走った。 刃長400mmの肉斬り包丁【白絹の雪月華(せつげっか)】が閃く。 〈ガッキィーン!〉 【白雪】の斬撃が、突如現れた鋼鉄の腕に阻まれ、鳴り響く衝突音。
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