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空気の摩擦熱で焦げそうな斬撃が、【赤ずきん】のフードを裂いた。
「ほう……良く避けましたね」
水鏡の剣の向こうから、涼やかな声音が賛嘆の言葉を告げた。
涼やかな声の主が、車のライトに照らされて浮かび上がる。
夜目にも鮮やかな蒼いコート姿で、長身の美しい青年が微笑む。
その微笑みは、美の女神すら嫉妬するような、甘く蕩ける美の結晶だ。
「……何者?」
青年の美貌に臆すること無く、【赤ずきん】が訊いた。
裂けたフードから赤毛が覗き、ヘーゼルの瞳が警戒の色に染まっている。
「【蒼(あお)】……狩人の【蒼】」
水鏡の剣を構えた美しい貴公子、【蒼】が静かに名乗った。
その名の通り霞むような瞳は、万年湖の如く透明なブルーだ。
「【白雪】が囮になって男を引き離したのに、失敗しました」
眉をひそめて【蒼】が困った表情を浮かべ、長く艶やかな蒼い髪を掻いた。
その表情ですら、世の女性が見たら卒倒する美しさだ。
「あらあら」
【蒼】の失敗を見た【白雪】が、落胆の表情で立ち止まった。
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