第1話「【鉄のハインリヒ】と【赤ずきん】」

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その可憐な顔面へ、唸りを上げてハインリヒの鉄拳が打ち下ろされた。 〈パッア―ン!!〉 低い炸裂音は、【白雪】の顔面が爆ぜた音か? さにあらず。ハインリヒの鉄腕を新たな参入者が、片手で受け止めた音だ。 参入者は【白雪】に背を向けているので、肩まである長い髪で顔が見えない。 しかし纏った硬質の気が、若者が只者ではないと告げている。 参入者は、黒いコートを着た若者だった。 孤高の狼のような眼光が光り、ハインリヒと対峙している。 鈍色(にぶいろ)の気を纏った、まるで鋼のような若者だった。 鉄腕を受け止められ、ハインリヒは身じろぎもせず固まったままだ。 ハインリヒは恐怖と戦慄で震えていた。 黒衣の若者に手首を極められて、身動きひとつ出来ないからだ。 鋼鉄の腕の駆動部を極める技とは、一体どういうメカニズムか!? 「どなたか存じませんが、尽力に感謝します」 ペコリと頭を下げた【白雪】に、若者は毒気を抜かれたように脱力した。 「ちっ」 その隙にハインリヒは、腕を解き後ずさった。
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