17人が本棚に入れています
本棚に追加
その可憐な顔面へ、唸りを上げてハインリヒの鉄拳が打ち下ろされた。
〈パッア―ン!!〉
低い炸裂音は、【白雪】の顔面が爆ぜた音か?
さにあらず。ハインリヒの鉄腕を新たな参入者が、片手で受け止めた音だ。
参入者は【白雪】に背を向けているので、肩まである長い髪で顔が見えない。
しかし纏った硬質の気が、若者が只者ではないと告げている。
参入者は、黒いコートを着た若者だった。
孤高の狼のような眼光が光り、ハインリヒと対峙している。
鈍色(にぶいろ)の気を纏った、まるで鋼のような若者だった。
鉄腕を受け止められ、ハインリヒは身じろぎもせず固まったままだ。
ハインリヒは恐怖と戦慄で震えていた。
黒衣の若者に手首を極められて、身動きひとつ出来ないからだ。
鋼鉄の腕の駆動部を極める技とは、一体どういうメカニズムか!?
「どなたか存じませんが、尽力に感謝します」
ペコリと頭を下げた【白雪】に、若者は毒気を抜かれたように脱力した。
「ちっ」
その隙にハインリヒは、腕を解き後ずさった。
最初のコメントを投稿しよう!