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その刹那──
〈ズドンッ!〉
大砲が撃ち込まれたような爆発音がして、ハインリヒが吹き飛んだ。
若者が一歩踏み込んで肩をぶつけた瞬間、何かが弾けたのだ。
あれは中国拳法『靠(かお)』の技法では──!?
しかし、ハインリヒは吹き飛んだ勢いのまま、【赤ずきん】の方へ飛んだ。
「【赤ずきん】、一旦退くぞ!」
ハインリヒは後ろも見ずに走り、【赤ずきん】を抱えて橋から下へダイブした。
橋から下を見ると、トラックの荷台に横たわるハインリヒと【赤ずきん】が見えた。
そのまま、ふたりを載せたトラックは疾走して去った。
ドイツ野郎にしては思いっきりが良いヤツだ。
一歩間違えれば、カエルのようにぺしゃんこだろうに。
「あれは、アンサンブルかエトランゼ、ですね」
感心したようにつぶやく【蒼】。
「逃げられました。【蒼】が失敗するからですよ」
頬を膨らませて怒る【白雪】に、とぼけた表情の【蒼】は頭を掻いた。
【白雪】が振り返ると、黒衣の若者は去る寸前だった。
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