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「もし、そこの御方、お名前を?」
【白雪】が訊ねたが、若者は無言で立ち去ってしまった。
纏った鈍色の気の余韻を残したまま。
「そして、あの若者も──」
【蒼】の渋いセリフも、【白雪】の立腹に掻き消された。
「話を誤魔化してはいけません。だいたい、わたしの尊い犠牲を──」
ご立腹の【白雪】は、その後延々と【蒼】に説教したのは言うまでもない。
東京都八王子市──
東京とは名ばかりの郊外のベッドタウンで、霊山で有名な高尾山を有する街。
名前の由来は、牛頭天王の8人の王子神である、「八王子権現(はちおうじごんげん)」が祀られている八王子神社があるからだと謂われている。
また、高尾山には富士山から続く龍脈(気の通り道)があると謂われている。
そういうことも相まって、付近には心霊スポットも多い。
正邪の気が流れる八王子は、街も混沌として魔街の様相を呈している。
その一角、裏路地に面した雑居ビルの二階──
そこに店を構えるマンガ喫茶【茶鼠(ちゃねず】に、昨晩活躍した【白雪】と【蒼】はフラリと現れた。
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