白雪姫と屍とチョコラテ

第１話「【鉄のハインリヒ】と【赤ずきん】」

「いらっしゃいまし！」

店内に入ると、威勢の良い巻き舌の挨拶が出迎えた。

トレッド風ツイストパーマのいかつい兄ちゃんが、店主の【茶鼠】だ。

「マスター、いつもの、お願いします」

【白雪】が告げ、専用の場所に陣取る。

店内は混んでいて、サラリーマンや初老の男が大勢いた。

【白雪】と【蒼】が来店してから、店内に異様な緊張感が張り詰めている。

「はい、【白雪】ちゃん、いつもの！」

【茶鼠】がダブルのチョコラテと、チェロスを持って来た。

【茶鼠】が作るチョコラテは、オアハカチョコラテの傑作だ。

チョコラテの粒を熱い牛乳で溶かす時、モルニージョという専用かき混ぜ棒で、ふんわりと泡立てて仕上げる。

甘くないチュロス（スペイン版ドーナツ）と、甘くふんわりとしたチョコラテ。

この組み合わせが絶品なのである。

「そいで、これはあっしの奢りさァ」

ボール一杯のサラダをテーブルに置いた。

「【白雪】ちゃん、甘い物しか食わねえから、野菜も食いねェ」

【茶鼠】が鼻を掻いて【白雪】に勧めた。