episode;1 宙を舞う

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それは、ある夏の出来事だった。 初めて自分用のパソコンを自作した頃の僕は、その自作PCを部屋の模様替えの為に移動を行っていた。東北の夏は非常にジメジメしていて、何をしていなくとも汗がベタベタと体に纏わりついて気持ちが悪い。それも数時間前に雨が降り、すぐ上がってしまったのでコンディションは最悪だ。 「なんでこんな最悪の日に模様替えなんてしてるんだろう。」 流れ出る汗を周辺機器やコネクターへ垂らすまいとしきりに汗を拭う。 何時もそうだ。 片づけても片づけても、その度に物の配置が分からなくなり1週間と保たず元通りに。よくある野郎の散らかった部屋の典型的な例だろう。 3畳ほどの部屋に、大きなPC1台とセミシングルサイズの折り畳みベッド、メタルラックが置いてあり、ベッドを一番奥に置くとクローゼットが開かなくなるし、だからといってそのベッドを入り口側に置くと、ベッドの上を上って通らなければ部屋には入れない。コンセントも1カ所しかない有り様だ。 そんな狭い部屋に、プリンタ、自作PC(床置き)、モニター、ルーター、HDDx5(外付け)、テーブル、音楽製作用の機材、エレキギター、キーボード(ROLAND)が置かれており、足の踏み場もないカオスな状態だ。 そんな部屋だから、模様替えという仮名を付けた大掃除もどきをしなければ部屋の掃除もままならない。パソコンのケーブルも全部外し、廊下へ全部出す。そしてその1つ1つを丁寧に部屋の外へ追放し、やっと掃除機を迎え入れる事が出来るのだ。 季節はまさに真夏。誕生日を数日前に半ば忘れられながら迎え、その時19の僕はリーマンショックの影響で職を失っていた。後に職探しの資金として、この部屋にあるものの殆どを失うのだが、それはまた別のお話である。
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