第1話

episode;1 宙を舞う

右足の裏に電源コードの感触。
左足の甲に電源コードの感触。

ノートパソコンの上に置いてあった外付けHDDが宙を舞う。

「アーーイキャーーーーンフラーーーーーーーイｗｗｗｗｗ」
という言葉が脳裏を駆け抜ける。

続いて僕の手を離れていくPC。

「ご主人、あなたのPCであれて、私は幸せでした。どうかお元気で。さようなら」
という声が脳裏を駆け抜けた気がした。

外付けHDDは綺麗な曲線を描いて窓の外へ一直線に、2階ベランダから1階の庭へと落ちていった。

ノートPCはベランダの手すりにガンと接触して、屋根をガガガガガガと滑り落ちて地面へ叩きつけられた。

彼らは生きて帰ってくる事は無かった。
外付けハードディスクは、あの嫌な音を発してデータも読み取れず、ノートパソコンは電源すら入らなかった。

今も彼らは、僕の部屋の押し入れの中で眠っている。
始めて買って貰えた大事なパソコンだっただけに、どうしても捨てる事が出来ないで居る。