1705人が本棚に入れています
本棚に追加
愛犬のめるるがドア引っ掻く音で目を覚ました。
「もぉー……どうせまたすぐ出たいって言うくせにぃー……」
眠い目を擦りつつ私はドアを開け、この可愛らしい客人……否、客犬を招き入れた。
ウエルッシュ・コーギー独特のピンと立った耳に短い足。
尾のないお尻を振りながらヨチヨチと部屋に入ってきためるるは、早速私のベッドに飛び乗った。
『一緒に寝よう』と言わんばかりに、目を細め、一センチ程しかない尻尾を振る姿がたまらない。
鮮やかなブラウンの毛を基調とし、額や鼻周り、お腹と脚だけが白いところがまた色っぽい。
そういや、めるるにはソラリス時代に店長の長時間説教で、私が参ってた時にも世話になったっけ……
この世界一セクシーな犬を抱き枕にし、私は二度寝した。
――約一時間半後。
もうすぐ飲み会の時間だと言うのに、私は中々出発出来ずにいた。
寝坊したからじゃない。
化粧ができないからだ。
メイクを施している時も、あのやりとりが蘇ってくる。
塗っても塗っても流されてしまうファンデーション。
糊がふやけて剥がれてしまう付け睫。
滲むアイライン。
いつもの倍以上の時間をかけて、それらをなんとか見れる程度に整え、私は車に乗り込んだ。
最初のコメントを投稿しよう!