勿体無き

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 私が出勤時間より二十分程早くすると、早番の皆が既に椅子がミーティング用に並べ終え 霧山さんが長方形のテーブルのソファー側の中心に掛けていた。  ゆったりとしたやや派手な柄物のトップスを上品に着こなし、下を細身のパンツで締めた姿がいかにも出来る女と言った出で立ちだ。 髪をシンプルに一つにまとめたスタイルも、霧山さんのキツ目だが整った顔を惹きたてている。  荷物を置いてからにしようか迷ったが、私は一旦歩みを止め、霧山さんに挨拶した。 「初めまして。 十二月より入社致しましたソフィアと申します。 よろしくお願い致します。」 「はい! どうもソフィアさん! 霧山です!」 私が会釈すると、霧山さんは座ったまま両膝に手をつき、頭を下げた。  語尾を伸ばすことなく、短くハッキリと区切る話し方から、霧山さんのサバサバした性格が窺えた。 まさに女性に好かれる女性像を体現したような方だった。  現に、この短いやり取りだけで、私は霧山さんに好感を持っていた。
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