勿体無き

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「――ですから、そのタオルを、もう少し清潔感のあるものに変えては如何でしょうか? やはり、お客様の顔に触れるものですし。」 私がニサンに抱いている唯一の不満だった。  今までずっと気になっていたし、社員の人にもチラリと言ったこともあったが、タオル全てを買い換えるとなると、経費は決して安上がりでは済まない。 私一人の意見だけでホイホイ変えるわけにもいかなかったのだろう。  しかし今回、こうして直接上の方に交渉できる機会に恵まれたのだ。 今言わなくて、いつ言うんだ。 「そのタオルは、具体的にどう汚いのですか?」 霧山さんが真剣な面持ちでとり合ってくれる。 「そうですね……色落ちしていて、中には穴の空いているものも……。では、実物をお持ちします。」 「うん! そうして!」 霧山さんの許可を得てから、私は事務所に干してある問題のタオルを持って来た。
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