勿体無き

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「この小汚いタオルを、お客様から見える位置に使うのは、如何なものかと思います。」  霧山さんに見えるように、タオルを広げながら、私はそう続けた。 タオルの向こう側が透けて見えるのは、決して照明のせいではない。  予想していたよりも遥かに汚らしいタオルが出て来た為か、霧山さんは腕組みをしたまま閉口……否、開口していた。 「それは……ないわあ……。本店なら、雑巾にしてるレベルですね。」 よかった。 この人はとても話のわかる方だ。 「タオルの色ですが、黄色でも大丈夫ですか? 本店で余っているものでよければそちらに送ります。」 霧山さんの早速の提案に、これは思ったよりスムーズにことが運ぶと確信した。
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