勿体無き

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 何を言われてもいいよう、無意識の内にあらゆる罵り文句を想定しながら、私はゆっくりと椅子に掛けた。  ソラリス時代は、こうなったら軽く三十分から二時間は説教されたっけ……    霧山さんが私の目をしっかりと見据えながら話を切り出す。 「ここに来る前から、ソフィアさん、あなたのことは常務から聞いておりました。」  常務は私の研修を担当してくださった人格者であり、霧山さんの兄だ。 「どんな子かは、直接会えばわかるので、敢えて詳しくは聞いていませんでした。」  霧山さんの目に、私は一体どんな人間として映ったのだろう……? これでもしガッカリしたとかだったら、下手に長時間説教喰らうよりヘコみそうだな……  先程と、また違った種類の緊張に、握りこんだ拳の中がジットリと湿りだした。
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