不穏な影

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 秋葉さんを部屋まで案内した矢田さんが戻り、私に一言 「気付きました……?」 とだけ聞いた。  気分が悪くて、声を発することすらしたくなかったので、私は黙って頷いた。  矢田さんが施術に入り、入れ違いで雪野店長が出勤してきた。  私のただならぬ様子を心配した雪野店長が、声をかけてきた。 「どうしたんですか?」 「実は……この人、前の職場に来てたお客さんなんです……」 話していて顔の筋肉がひきつるのが自分でもわかった。  ソラリスで何があったか知らない雪野店長が、悪気の無い故の明るいトーンで応える。 「へえーっ! よかったじゃないですか! あれでしたら、帰り際に挨拶したらどうで……」
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