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携帯を開いては閉じると言う作業を何度も繰り返した後、私は深呼吸して送信ボタンに指を宛がった。
あの店長に連絡した時でさえ、ここまで鼓動はうるさくなかった。
健康な人間に強心剤を打てばこうなるのではないだろうか?
眼球を奥にしまい込むように強く目を瞑り、携帯を落としかねない程震える手で、私は送信ボタンを押した。
送信中の画面が出ている間、今度は中止ボタンを押さないよう、親指を携帯から離していた。
『送信完了』の文字が表示された途端、私は自分がずっと息を止めていたことに気付いた。
胸を押さえ、長距離を全力疾走したかのような荒い息を整える。
送り終えた今も、自前の強心剤の効能は切れていなかった。
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