だから私は……

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 たったの二行なのに、そこには藍田さんの優しさが詰まっていた。 そうか……今やっとわかった……だから、私は……  唇が自然と笑みを作るのがわかった。 こんな風に、家庭を大事にする人だから、私は…… こんな風に、こんな私にさえ気を遣ってくれる人だから、私は……っ 考えてくれてたんだね 悩んでてくれてたんだね どうやったら私を傷つけずに断れるか…… 意図はしてないかもしれないけど、結果として奥さんは勿論、私のことも大事にしてくれたんですね…… でも、もう大丈夫です。 私、もうこれ以上あなたを困らせたりしませんから…… 気持ちだけでも、貰ってくれてありがとう……  当初の目的を果たせない結果になった筈だが、不思議と涙は出なかった。  私は閉じた携帯をバッグにしまい、職場に車を走らせた。  職場付近の駐車場に車を停めると、私は時刻を確認した。 出勤時間まで、まだ余裕がある。  私は、今までさんざん巻き込んでしまったハル達に結果を報告すべく、電話した。
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