得体の知れない恐怖

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「え……? 」  私の答えが意外だったのか、中田さんが私の顔をマジマジと見つめる。 そこに以前の私の面影を見たのか、中田さんの声は閃いたような明るいものへと切り替わった。 「ああ! 君! 前に、会ったこと、あったよね? 」  直前まで迷ったが、私は正直に答えた。 「ええ……大分前に……。お久しぶりですっ。」  私は辿々しく答えながら会釈した。 「じゃあ、君指名で! 」 再び心臓が跳ねた。 何故だ? ソラリス時代一度も指名したことがなかったのに、何故今更……? 何だ? 何が狙いだ? 何を企んでいる?  頭に浮かぶ数々の疑問符と、得体の知れない恐怖。  指名料がかかることを説明し、計算し直し、会計を済ませている間も、頭は考えうる可能性を検索していた。
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