得体の知れない恐怖

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「お部屋、寒くないですか? 」 お決まりの台詞を言いながらも、内心では伝家の宝刀を抜くタイミングを見計らっていた。 「ん? 大丈夫だよっ! 」 こうやって話してたらいい人なんだけどな。 「確か、圧は強いのお好きでしたよね? 」 「うん! …………覚えててくれたんだっ……! 」  最後の一言は、本当に心から嬉しそうな声だった。 それを聞いて私も少しだけ緊張が解けた。 「勿論ですよ! 確か “会社から過労死させられるかもしれない。来なくなったら死んでるかも。” って言ってましたよね? 心配してたんですよーっ! 」  これは本音だった。 以前は毎週のように来てた中田さんさんが、良子さんが辞めた辺りから急に頻度が減り、終には来なくなってしまったのだから。 「いやあー、実はね、僕がソラリスに来なくなったのはね……」 この先語られるであろう理由が、今回の件に繋がっている気がして、私は息を呑んで構えた。
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