得体の知れない恐怖

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 恐らく良子さんはカルテから中田さんのアドレスを調べて連絡したのだろう。 ……こんな風に、完全に営業として連絡し、ニサンで働いていると伝えていれば、藍田さんにも会えたかもしれない。 だが、そうしていればきっと私の藍田さんへの思いは膨らむ一方となり、更に辛い思いをしていただろう。 これで、良かったのだ。 疼く胸の痛みを鎮めるように私は自分にそう言い聞かせた。  中田さんは良子さんから私がニサンにいると聞いて様子を見に来たと言うことだった。 何故良子さんが私の居場所を知っていたかと言うと……  まず、店長が右腕である田丸さんにそれを話す。  田丸さんは実は昔、良子さんと同じエステ店で働いていたのだ。 つまり連絡先も知っている。 良子さんが独立した時も、良子さんのお店に施術を受けに行っていたらしい。  そして田丸さんが良子さんに私のことを話し、良子さんから中田さんへと伝わったわけだ。 人の繋がりってすごい。 つくづく思った。
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