底知れぬ怒り

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 勿論、着信履歴は良子さんからの番号で…… 同じ番号から届いたSMSには、こう綴られていた。 『ソフィアさんって、あのソフィアさん? 』  私は迷わず折り返していた。  三コール目かで、呼び出し音が途切れ、あの懐かしいハスキーな声が鼓膜を心地よく揺らした。 「もしもしっ? ソフィアさんって、あのソフィアさんっ? 」  SMSと同じ台詞を生で繰り返しているのが、何だか不思議で可笑しかった。 「はい! お久しぶりです! 」 「ホント久しぶりですっ! 」  私の挨拶に明るく応えた後、ハッとしたように良子さんは続けた。 「あの…………イと、繋がってないっ?! 」 この緊迫した声色と、中田さんとのやり取りから、それが店長を指していることは容易に想像がついた。 名前の部分が良く聞き取れなかったので、念の為私は聞き返した。 「えっ? 誰とですかっ? 」 「あのデブ。ハゲ。」 「ちょおっ?! 」  あまりにも的確な特徴の羅列に思わず吹き出したが、電話に出た時とは打って変わった鋭く尖った低い声から、良子さんの底知れない怒りを感じた。  そして、先程聞き取れなかった店長の代名詞が『クソジジイ』だったことも、この時に解った。
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