底知れぬ怒り

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「あ! 後ね、ソラリス潰れたでしょっ? ソフィアさんの名前は最後までホームページに残ってたけど、いつ辞めたの? 」  私は自分の退職日――藍田さんと別れた日だ――を正確に伝えた。 「へえー……じゃあ、大分前に辞めてたんだ? 辞める時、大丈夫だった? 揉めなかった? 」 「退職日は……円満、でしたねっ。」  退職の話が出たときは修羅場だったけど。 「何で辞めようと思ったの? 」 「不満が積もり積もってたのと、店長が “鼠径部中心の店にする。制服もミニスカートに谷間見えるのにする。” って言い出しまして……」 「あぁー……、目先の金に目が眩んで、なりふり構わなくなったってわけだねっ……」  蛇足かと思ったが、私はその経緯も正直に話した。 「――で、帰り際に引き留めてきたんですけど、優しいのは人数が足りてないからなだけで、もしまた指名取れる人間が入ってきたら、絶対元に戻るなって思って……」 「あー! うん、戻る戻る! 辞めて正解だよ! 」  良子さんの口調から、彼女が前々から店長に不満を抱いていたことが読み取れた。
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